データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則 (矢野和男)

やわなべです。

今日で仕事納め、年末年始の9連休に入るという方も多いことでしょう。これだけ休みがあると、後ろめたさから、なんとなく会社のノートパソコンを持ち帰って、年内にできなかった作業を少しでも進めておこうか、とか、休み中にwebデザインの勉強をしよう、とか、これこれを一気に読んでしまおう、なんて壮大な目標を立てがちなんですが、まあ予定通りできることはまれです。ですよね?

で、結局、仕事始めの日になって、まったく達成できてない目標を振り返っては、自分の意志の弱さ、集中力のなさを嘆いたりするものですが、それって、実は当たり前かもよ、というのが、最近読んだこれで思いました。定期的に大きな目標をたてては実行できずに自己嫌悪を繰り返すのが、パターン化しているような方は、GTDやToDo管理などを見直す前に読んでみてもいいかもしれません。

人の腕の動く回数は決まっていた

著者は日立で今話題のウエアラブルセンサとそこから得られるビッグデータの解析、研究をずっとやってた方なんですが、自らが被験者となって、加速度センサのついた腕輪みたいなウェアラブルデバイスをなんと8年もの間、24時間つけっぱなしにして、自らの腕の動きのバターンを数とり続けたんだそうな。

その結果わかったことは「1分間に腕を動かした回数」の分布をプロットすると、それがきれいに「U分布」の形になるってこと。「U分布」ってのは指数分布で、回数が2倍、3倍と多くなるにつれ、その頻度が 1/4, 1/8とべき乗の逆数で減っていく。

たとえば歩いている時、腕は1分間で80回ほど動いていて、パソコンのモニターを見ているようなときには、これが50回ほどに落ちるそうなんですが、その頻度の分布をプロットしていくと、1分間に120回動かした時間の長さは、60回動かした時間の1/4、3倍の180回動かした時間は、2の3乗分の1、つまり、1/8に減る。

勤務日と休日では生活パターンは異なるはずなんですが、その分布は変わらない。のちに被験者を増やして、いろんな生活パターンの複数の人間のデータをとっても、多少の個人差はあれど、いずれもU分布の形をとる点は同じだったんだそうな。

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人間の活動時間には予算がある

で、これが何を示しているかというと、著者は「活動予算」ということばを使ってるんですが、たとえば「腕を動かす」という普段あまり意識しないミニマルな動作で見ても、ある頻度で動かす時間は、一定の範囲に収まるということ。これはつまり、特定の1日に普段より活動量の多い時間を増やそうとすれば、どこかで動きの少ない時間を確保して、帳尻を合わそうとするってことです。

たとえば、どうしても今日中にやらないといけない作業があるのに、ついついスマホやツィッターを見たりしてサボるのは、あながち現実逃避や、意志の弱さだけではなく、活動予算の割り当てを一定にしようとする動きなのかもしれません。

集中できる時間も一定

これが、もし脳の活動なども同じだとすれば、1日に集中できる時間というのは人によって多少差はあっても毎日の中でほぼ一定だということ。たとえば1時間だとすれば、その1時間という予算をどれだけ効率的に使うか、という検討には意味があるけど、気合で2時間がんばろうとしても、どこかで体がバランスを取って、集中力が散漫になるはずだと言えます。

つまり、いつも仕事が忙しくて、できていないことを休暇中にやっつけようとしても、実際に身体や脳が動ける時間予算は決まってるので、それ以上には頑張れない。無理に頑張るとそれは身体にとってかなりのストレスになるだろうってことですね。

逆にゴロ寝だけですごすのもストレスになるかも

逆に言えば、年末年始だからといって、食っちゃ寝だけで1日過ごすと、それはそれで、1日の活動予算を消化しないストレスにつながるので、頭なり体なり、いつもと同じ程度に動かしたほうがいいでしょう。

本当に、休み中にするべきことは、仕事などの制約がないところで、自分がストレスなく生活できる動作とその活動予算はどのくらいかな、と考えることなのかもしれませんね。

本書はその後、守護霊を教団本部に召喚する、といった手法ではない、真に科学的なアプローチで、幸福につながりやすい動作、なりやすい人を考察したり、最後の方はなんとなく日立のビッグデータ研究の自慢かな、とも思える記述が増えたりもするんですが、やっぱり最初の1章が一番おもしろかったです。

同種の本としては、この本もおすすめでしょうか。あ、普段あまり本を読まない人は無理に読もうとしないほうがいいですよ。