『世界はシステムで動く』(ドネラ・メドウズ)を読んだ。問題解決へのアプローチになるのか?

やわなべです。

本を買ってばっかでちっとも読んだ形跡がみえないので、たまには書評めいたものを。

物事、特に問題に対して対処するフレームワークを提示しようとする本です。具体的には解決すべき問題を含む現実の構造を「システム」ととらえ、構成する要素を抽象化してモデル化しようというもの。

ここでいうシステムってのはコンピュータ・システムのことではなく、動きを持った構造、くらいな意味でしょうか。

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フローとストック

モデルを構成する中で一番重要な要素は「ストック」と「フロー」です。会計の知識がある人にとっては馴染みやすいでしょう。

例えば、エアコンの入った部屋の温度をストックだと考えると、エアコンのセンサーが設定温度を上回ったと感知した時点でエアコンが室内に冷気を送りはじめます。これがインフローの動きです。

一定期間動き続けて、適温の範囲よりも下がったことをセンサーが感知すれば、今度は、送風モードに変わってインフローが止まります。インフローが止まると、だんだん室温が上がってきます。この場合のアウトフローは外気による室温の上昇です。

会計のイメージが強すぎると、この例に違和感を感じるかもしれません。会計だとストックもフローも「何か実態のあるものが流入、蓄積、流出する」と考えがちですが、この例だと「じゃあ、一体何がストックされてるねん?」となりますよね。強いて言うなら「冷気」ですけど「何が」という問いはあまり重要ではなく、「室温」という測定可能な指標を「ストック」、それを上下させる動的要素を「フロー」と呼ぶというモデルと考えるということです。

フィードバックループ

上の例では、室温はエアコンに搭載された温度センサーによって設定された室温の範囲内で上下を繰り返すことになります。この動きがフィードバックループで、これによって暑すぎず寒すぎない室温というストック水準がバランスよく維持されるわけですね。

フィードバックループはフローの強弱に影響する存在で、温度センサーの場合は、フローが強すぎると弱め、弱まったら強めるという動きから「バランス型フィードバックループ」とよばれます。

もうひとつ「自己強化型フィードバックループ」ってのがあって、フローの制御の強弱がどちらか一方に傾くと、その方向への動きを更に強める働きをします。

自己強化型のループが動き出すと、好循環か、あるいは悪循環のどちらかのパターンを取ることになります。ピケティさんのいう「富める者がより富める構造」というのは(本人にとっての)プラス方向の自己強化型フィードバックループですし、どこぞの国の財政のように、ストック不足を埋めるべく債券を発行すればするほど、利払いがかさんでさらにストック状況が悪化する、てのはマイナスのフィードバックループですね。

本書の後のほうで、モデル要素のどこを優先していじるべきか、考える章があるんですが、、自己強化型フィードバックはバランス型のそれよりも優先度が高いってことがなんとなくわかるんじゃないかと思います。

このモデルをいつ使うのか?

ここまで書いたのはほんの一部で、全部はとても書ききれませんが、システムを構成する要素、動きのパターンが順次紹介されていきます。

メモを取って覚える必要もないですし、このアプローチが適切かどうか考えるのもあまり意味が無いでしょう。あくまでこれはフレームワークなんで、読み手がこれを使うか使わないかってのが重要となるわけです。

また、後半になると前半の教科書的なトーンが若干変わって「実際の物事はそう簡単にすっきりモデル化できるものではない」という観点から、「その中でなるだけ賢明に振る舞うにはどうすればいいか」ということが語られます。

計測が難しいけれども重要な要素

実際、このフレームワークが適用されるべき課題というのは、個人的な問題というよりは、いろんな利害関係が重なりあった複雑な問題、少子高齢化だとか、地球温暖化だとか、飢餓、貧困問題だとかに用いるものだと感じました。

個人的な問題や企業の問題ならたいていは、資産や売上といった経済的ストックを上げることを考えればよいケースが多いです。また、それらは数値化して測定しやすいため、どうしても具体的な行動に落とし込むときに経済的指標が優先されがち。

社会問題に対する国家のアプローチでも、「どこに助成金をつければいいか」「そのためには予算がいくら必要か」「必要な財源はどこから持ってくるか」、と、どんどん問題の核心からそれた方法論「how(どうやって)」に話がそれていきがちです

この本のキモは、抽象化の話でありながら、そうした「抽象化する際に見落とされがちな、計測が難しいけれども重要な要素」に目を向けようと示唆しているところですね。

例えば「人間は自分が知り得た情報の範囲の中で合理的に行動する」という限定合理性の話。ひとりひとりは合理的に動いているつもりなのに、前提となっている情報が間違っているので実際には不合理な動きを取る可能性。

対処としては「可能な限り情報を公開し、広げること」。人々がより合理的に動けるようにすれば、助成金制度を設けなくても、自律的にシステムの改善が期待できることもある、と。

もし本書を読み終わったら、関心のある社会問題をひとつシステムモデルとして抽象化してみると頭の体操に良さそうです。実際やってみると「あれ、この場合、何がストックなんだろう」と悩むことも多く、結構奥が深いです。

そういや、自分の身のまわりにもあるんですよねぇ。個人的に当事者のひとりではあるもののどう対処すべきなのか判断できかねる問題が