大阪都構想を真面目に考えてみたが、大阪市民として賛成する理由が1ミリも見つからない

大阪市民ですがたいして税金は払ってない小市民、やわなべです。

ここ大阪市内ではGW中にもかかわらず、政党や選挙管理委員会の広報カーが呼びかけを続けてます。これですね。

5/17に予定されている、いわゆる「大阪都構想」への住民投票です。ポストを見ても毎日のようにチラシが入ってるんですけど、読んでもそもそも何を問題視してるのかがどうも腑に落ちない。というわけで付け焼き刃ですが調べてみました。

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これ…自治権の放棄でしかないのでは?

5/17の住民投票の権利者は大阪市民のみです。恥ずかしながら私知りませんでした。で、何に対する是非を問うかというと、上の投票用紙にある通り「大阪市における特別区の設置についての投票」です。

(公式) 大阪市市政 第16回大阪府・大阪市特別区設置協議会 開催結果

2014年に上の協議会(都構想の準備委員会的なもの)で提出された「協定書」に沿って、市の廃止を進めるかどうかを市民に問うものです。で、上のページからPDFをダウンロードできる協定書を見ても「大阪都」なんて言葉は出てきません。書かれているのは、

・「大阪市を廃止」する
・ 代わりに「特別区を設置」する
・ 今ある大阪市の権限、財源を府にを移管する

ということ。要するに、今回の住民投票は、

「政令指定都市である大阪市を廃止し、その財源と権限を府に移管するかどうか」

の投票です。これだけ聞くと「当の大阪市民に聞いてYESなわけないだろ」と思うんですが、世論調査とか見ると賛否が拮抗してるんですよねぇ。

投票権のある大阪市民は同時に大阪府民でもあるわけですから「それで大阪が良くなるんだったら…」という考えの方もいるかもしれません。

が、これが例えば「神戸市を廃止して神戸市の財源、権限を兵庫県に移管しよう」だったらどうでしょう。「横浜市をなくして神奈川県に…」とか「名古屋市を廃して愛知県に…」でもいいです。

もし隣の県でそんな騒動が起こってたら私なら「神戸の人ら、かわいそうやなぁ」と単純に思いますけどねぇ。「ワン兵庫のために神戸なくしてしもてもええやないか」なんて自虐的な神戸市民、想像できます?

2重行政がほんとに最大の問題なのか?

「なぜ特別区?」という問いに対して、推進する維新の会が最初に持ってくるのがこれです。同じ機能を持った施設の建設、運営を市と府がバラバラにやってることでコストが二重に発生し、結果、財政支出がかさんで赤字がえらいことになってるんだ、と。二重分を削減して、その分を成長分野へ投資すれば大阪の財政は良くなる、というストーリーです。

大阪都構想 二重行政のムダをなくす。豊かな大阪をつくる。

「大阪維新の会」が作成した都構想のPRサイトで、問題の説明として最初に出てくるのがこの図。たしかに大阪市、大阪府ともに借金まみれの自治体なのは確かです。(参考:総務省|地方財政状況調査関係資料)単純にそれぞれの地方債の残高を足すとその残高は8兆円を超えます(H25年度で大阪府5.6兆、大阪市2.5兆)。が「二重行政解消で削減されるのはどれだけか」というところは、もうすこし吟味しないといけないかと。

都構想で削減できる支出は年間0.5%

この点に関しては、維新の会が構想段階から「4000億円の削減効果がある!」と喧伝していて、数日前にポストに入ってた同党のチラシにもまだ書いてありました。

が、すでに発足している市、府の公式の特別区準備事務局が去年7月に出した試算では、平成45年の時点で年間227億円の削減となっています。

(公式) 大阪市市政 第16回大阪府・大阪市特別区設置協議会 開催結果
(上のページにある「資料2-2 各特別区の長期財政推計[粗い試算(その2)]」というPDFを参照しました。)

これは特別区のうち北区の試算。一番右下、平成45年度で29億円の経費が削減できるとあります。5つの特別区と大阪府の数字を足すと227億円になります。

ちなみに反対する自民党なんかはこの数字すら「根拠の薄い眉唾もの」だと批判してますが、選挙管理委員会からの公報に載っていた「大阪維新の会」の主張は、堂々とこの数字を引いています。

グラフで順調に上がってるのは毎年の経費削減額の累計です。節約した額を平成45年まで積み上げたら2700億(だいぶ減ってますがw)になる、との主張。

平成45年といったら東京五輪の13年後ですよ。そこまでの経費削減を積み上げた数字に意味あるんでしょうか。

で、その下にある小さい棒グラフが毎年の収支です。初期コストを消化して財政が黒字に転じるのが6年後。10年後くらいからコンスタントに年間200億円の効果が出はじめるという試算です。

年間200億も支出が削減できるんやったら大したもんやないか」と思った方へ。上にあげた「大阪が借金まみれだ」というグラフのソースになってる総務省の地方財政状況調査関係資料を引用すると、平成25年現在の、大阪市、大阪府の財政規模はこの通り。

市と府の数字を単純に足すと、年間の歳入、歳出が4兆円規模の自治体となります。その歳出が大阪市を廃した10年目以降、毎年200億円減りますよ、ということです。4兆円の支出が200億減るわけですから、節約できる額はせいぜい 0.5% となりますね。ちょっとさびしすぎやしませんか。「効果なし」と言っても誤差の範囲でしょう、これ。

企業に例えるとすれば、これまで子会社制を採用していた企業が「子会社を廃止して親会社に財務を一本化、事務系セクションは本社へ統合します。統合による財務改善効果としては、10年後をメドに0.5%の経費削減を見込んでおります」とか言ってたら「ぬるすぎるわw」と株主に総ツッコミですよ。本当に都構想が大阪を変えるための唯一最善の解決策なんだとしたら、すでに詰んでるとしか思えません。

てか、今、他ならぬ大阪維新の会が、府と市の両首長ポストを占めてるんだから、あわせて0.5%の支出削減くらい、協議の上で1年で達成できるだろ、と思うんですけど。上の資料では平成23年から25年にかけて、2年で大阪市の借金、2000億くらい減ってますよ。(逆に大阪府の借金は2000億増えてる)

いいかげん東京との差は都か府の違いなんかじゃないと認めよう

もうひとつ、今回の都構想になんとなく期待を感じてしまう要因に「東京への羨望、嫉妬、対抗心」があるんじゃないかと思っています。

もう一度、このグラフに戻ります。見せ方が巧妙だなあと思うのは、

大阪府はまだマシだけど大阪市がクズ、という印象を与えるところ
・それぞれ、東京との差を見せることで、大阪の人の潜在意識の中にある東京への対抗意識を喚起しようとしてるところ

です。そもそも東京と比較するのが妥当なんでしょうか。そして、東京のパフォーマンスがいいのは特別区制度のおかげなんでしょうか。

上のグラフは人口比で見てますが、総務省の資料を見てて改めて思うのは、東京、および首都圏の人口の多さです。大阪市の人口(266万)が横浜市(371万)に抜かれて久しいですが、4年前には、大阪府の人口(869万)が神奈川県(879万)に抜かれました。千葉県、埼玉県の人口も600万を超えていて、関西圏の差は倍以上です。

東京圏への一極集中は、バブル期あたりからすでに顕著になっていて、今やそれが日本の国力の源泉にもなってるわけです。高い目標を持つのはいいですが、比較の対象としては妥当じゃないんじゃないでしょうか。

今の首都圏の繁栄の要因が特別区制度だけってのはあまりにも短絡的すぎますし、特別区には特別区なりの問題もあるようですよ。

東京23区は東京市に戻りたがっている

東京23区の世田谷区の現役区長である保坂展人さんが、2014年2月に書かれたブログで大阪都構想の批判をしておられます。

「大阪都構想」の欠陥 東京23区の現実(「太陽のまちから」2014年2月5日) – 保坂展人のどこどこ日記

世田谷区のような特別区は、地方分権改革によって国や都道府県から基礎自治体へと移管される事務が多いため仕事量が増大し、事業と責任の範囲はふくらんでいます。

一方で、法人住民税、固定資産税(個人・法人)などは都税として徴収することになっており、その55%が各区に再配分されるにすぎません(都区財政調整制度)。また、地方分権の流れで基礎自治体に移行した「都市計画決定権」は、なんと「特別区」のみ除外されており、まちづくりの戦略指針さえ自由につくることができません。学校教育に責任を持つ立場でありながら、教員の人事権は都であって、区にありません。

要は予算と人事権を都がにぎっているため、現場として必要な施策が打てず、しかも事務作業量は増えるばかりとのこと。

東京の特別区は長い間、自治権拡充のたたかいを続けてきました。(略)いま、東京都知事選であがっている論点の中で、「子育て支援」「若者支援」「高齢者福祉」「障害者福祉」の最前線はいずれも区が抱えている現場です。押し寄せる大きな行政需要の波に日々さらされているのも区です。だからこそ、財源と権限が必要です。特別区のような制約された自治体の姿でいては、求められるニーズに対応できないと考えています。 警察・消防・上下水道等の広域行政を除けば、住民サービスの多くが区の仕事として行なわれています。東京の分権・自治改革が必要です。

もちろんこの意見が23区の総意ということはないでしょうが、財政的に大阪よりもうまくいっている東京でも、特別区の中では「財源、人事権などの自治権の制限」があるようです。政令指定都市にも問題はあるんでしょうが、都+特別区体制に移行したらバラ色ってこともないようです。

もちろん大阪維新の会は、「特別区になっても旧市エリアへの還元額が減ることはない。すべてデマだ」と主張していますが、残念ながら協定書にそれを確約するような記述はありません

上で見たように、新たな財源と目論んでる2重行政解消の経費削減効果が公式機関の試算ですらほとんどないわけですから、単純に考えて今の大阪市域に当てられる予算は減ることはあっても増えることはないでしょう。

てか、新たな財源なんてない、と公式文書で出てるのに、そこまでコストかけてやろうとするのはなんか企んでるんちゃうんか?、と勘ぐりたくもなりますよねぇ。

まとめ

まとめると、大阪市民が5/17に特別区への移行を可決した場合、こうなると考えます。

  • 1. 二重行政解消による財政改善効果はほとんどない。新たな財源などなかった
  • 2. 特別区としての財源、権限は今の大阪市より確実に減る
  • 3. 特別区から大阪市に戻そうとすると、東京23区同様、困難な道のりが待っている

もちろん一市民の感想なんで、他の市民の方がどのように考えられるかは知りませんけどね。

もう少し詳しい情報を知りたい方は、この本をおすすめします。基本的に本エントリーのアウトラインはこの本の主張に沿ったものです。

「大阪都構想が日本を破壊する  (文春新書 1020)」販売ページヘ

大阪都構想が日本を破壊する (文春新書 1020)

  • 作者: 藤井 聡
  • 出版社: 文藝春秋

いや、賛成派の意見を理論的にまとめた本も探したんですけど無いんですよ!!

あとは、2年前から客観的な視点でていねいな検証をしておられるこちらの方のブログも

(参考)橋下市長の大阪都構想を、きちんと考えてみる