「ピーター・リンチの株の法則」は儲けよりも株の楽しさを教えてくれる本だ

やわなべです。GW中に結構損切りしたことを週明けの爆上げで後悔しております。

さて、米フィデリティでファンドマネージャーを長くつとめられた、ピーター・リンチさんの本「Beating the Street」の新訳が「ピーター・リンチの株の法則」というタイトルで出たというので読んでみました。株式売買を勉強におすすめの本として決まって出てくる「株で勝つ」の続編みたいな本ですね。

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ピーター・リンチの株の法則

  • 作者: ピーター・リンチ
  • 出版社: ダイヤモンド社

「株の法則」は新訳ですが、原著が出たのは1993年です。リンチさんがフィデリティでファンドマネージャーを勤めてたのが1977年から90年までの13年間、その間に担当したマゼランファンドの資産を777倍(!)、にふくらませた凄腕のファンドマネージャーです。

この方、相当なメモ魔でして、その13年間の業務や調査のかたわら書きためた山積みのノート(銘柄ごとのメモと日誌)を見返しながら、当時の回想を本にしたのがこれです。引退後のお気楽な立場で自由に書いた感じが伝わってきて、非常に読みやすいです。

タイトルこそ「法則」なんてついてますが、参考書のように体系だった本というわけではないので、感想も思いついたものから書いていきます。

あ、話の内容は全編ファンダメンタルです。チャートの動きがどうたらとかいうテクニカルな話は一切出てきません。その辺りが知りたいという方は他の著者の本を当たるべきでしょう。

数字は重要だが、リアルで触れる情報はもっと重要

自称「銘柄オタク」なリンチさんの銘柄選定手法は、今じゃ初心者の個人投資家でもやってるようなパソコンでのスクリーニングをせずに、年次報告書を丹念に読んだり、その企業のCEOやIR担当に直接インタビューして得た情報を重視する点です。

文書から得た数字と、足で稼いだ情報とを非常にうまく融合して、投資判断の精度を常にあげようとする姿勢がうかがえます。でまたそれが、心底楽しそうなんですよ。

そして、とにかくなんでもメモに残す。 一度でも検討した銘柄はかならず銘柄別のノートにとるし、企業担当に会ったとか、仲間内のファンドマネージャーと立ち話の内容なんかも、その日付と会話の内容と、その時点でのその会社の株価をメモしておく。

私達のような個人投資家は、なかなか直接企業の役員に話を聞けないですが、その代わり、日々の生活や仕事の中で入ってくる会話や情報をアンテナにすればいい、と彼は言います。本書の最初に出てくるのは、とある小学校がクラスでバーチャル投資をするエピソードなんですが、「(小学生が)何をやっているのか絵にかける」企業をリストした結果、そのファンドのパフォーマンスがインデックスのそれを大幅に上回っていた、ということです。無理して知らない銘柄に手を出すな、ということですね。

一度取引した銘柄を忘れるな

一方で、常に新しい銘柄を発掘するのも重要です。が、すでに検討した結果、投資を見送ったとか、実際に売買した銘柄でも、再度見直すと、以外にいい買い時であることがよくあるとも。

何かの銘柄を買って、そのことをすっかり忘れ、また別の銘柄に手を出すーーよく見られるパターンだが、これでは成功はおぼつかない。だが、そういうことを続けている投資家はたくさんいる。昔買った銘柄を見るとつらい思い出がよみがえってくるから、さっさと頭の外に追い出してしまいたいのである。損はしなかったが売るのが遅すぎたのか、早く売りすぎて損をしたのか。どちらにしても忘れてしまいたいのである

あー、これは思い当たりますねぇ。どうしても、まだ買ったことのない別の銘柄に、すごい宝がありそうな浮気心が常にあるんですが、同じ判断基準ですでに売買した銘柄にも接するという点が肝要だと。

リンチさんの思い出銘柄メモリーズ

リンチさん、基本しゃべりたがり、なんでしょうね。文章もウィットが効いてて単純に読み物としてとても面白いです。本書の後半はある一時期の10以上の銘柄選定から投資に至ったケースをいくつも紹介してくれるんですが、パフォーマンスはともかく、過去の売買の動機や判断材料について、これだけのストーリーを後追いで書ける人ってどれだけいるんでしょうか。

中でも、バランスシートや、業務内容、店舗数、在庫の推移、競合とのシェアなどから、「あるべき株価はこの辺りなはず」を導き出し、推奨銘柄に組み入れるかどうかを判断するまでの具体的な過程を描いた10章の ゼネラル・ホスト社の投資ストーリーは上でも書いた「報告書の数字と、目と耳と足で得た情報とをどう組み合わせて判断につなげるか」という点で非常に参考になります。

思い出リストの最後に、「一番のお気に入りだった」として「ファニーメイ」をあげているのはさすがに時代を感じるところではありますね。(ファニーメイは、その後2007年にサブプライムローン問題で約21億ドルの損失計上。2010年にニューヨーク証券取引所の上場廃止してます)

銘柄選びを楽しもう

最後に「25の黄金律」なんてブログ風のまとめはあるもののもちろん「これをやればOK」みたいなものではないです。ウォーレン・バフェット氏の伝記「スノーボール」を読んだ時にも感じましたが、この人達は本当に株が好きで、銘柄選びと資産増やしをまるでゲームのように楽しんでるのがひしひしと伝わってくるんですよねぇ。

マネー情報誌などで他人のおすすめ銘柄情報を求め、なんとか老後の備えを増やしたい、といった一般投資家との違いはそのマインドです。「銘柄選びを人任せにして何が楽しいの?」っていうリンチさんの声が聞こえてきそうです。時間的制限などでそれができないんなら素直に投資信託買いなさい、とも)

リンチさんの話に耳を傾けるのは、彼が担当したファンド資産を777倍にした、という実績があってこそ、なわけですが、ここで書かれてるのは「儲けよりも株って楽しいよ」ということにつきます。いくらお金が増えたか(減ったか)だけ気にしてたらそりゃあ楽しくないですわね。

投資は楽しい。エキサイティングだ。ただし、下調べを全くやらずに手を出すのは危険だ。

本書が気になる人におすすめしたい本

最後に、僭越ながら本書を読もうとする人(=長期の投資を検討するも、どうやって銘柄を選べばいいか知りたい人?)におすすめする本をあげときます。

「ピーター・リンチの株で勝つ―アマの知恵でプロを出し抜け」販売ページヘ

ピーター・リンチの株で勝つ―アマの知恵でプロを出し抜け

  • 作者: ピーター リンチ
  • 出版社: ダイヤモンド社

ピーター・リンチさんの話術に魅了された方で、未読であれば、本書の前編にあたるこの本はぜひ。

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億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術

  • 作者: メアリー・バフェット
  • 出版社: 日本経済新聞出版社

こちらも上とセットで読んだ方は多いでしょう。リンチさんの本よりは、企業の持つ資産を重視する点と、数式が多めで理論的なところが特徴でしょうか。

「スノーボール(改訂新版)〔上〕 ウォーレン・バフェット伝 (日経ビジネス...」販売ページヘ

スノーボール(改訂新版)〔上〕 ウォーレン・バフェット伝 (日経ビジネス...

  • 作者: アリス・シュローダー
  • 出版社: 日本経済新聞出版社

バフェットさんを読み物として読むなら、これがおすすめ。文庫だと3冊でかなりなボリュームですが、リンチさん同様に成功するにはパラノイア的なのめり込みが必要なんだと思い知らされます。