企業に対する従業員の住民税の天引き義務づけが厳しくなってるそうです

やわなべです。

先日、友人の「ひとり社長」(従業員が社長である自分ひとりだけの会社を経営してる)Yさんから聞いた話なんですが、住んでる自治体に納める個人の住民税を会社から天引きの形で支払うよう税務署から通知が来たんだそうな。

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住民税天引きは地方税法で定められた企業の義務、ですが…

サラリーマンの方であれば、毎月の給料から所得税とともに住民税が天引きされている方が多いと思います。が、実は所得税はともかく、住民税の天引きについてはとくに零細企業では行われずに、個人に直接納付書が届くケースが多かったようです。


(参考)個人住民税は特別徴収で納めましょう | 全国地方税務協議会

この住民税天引きは、上のページで案内されているように、地方税法に定められた企業の義務なんですが、Yさんや、社員5,6人の会社をやってる企業の社長さんに聞いても、所得税は源泉徴収で天引きしてるけど、住民税は会社はタッチせず、個人に自治体から直接納付書が届くでよかったのに、いきなり会社にやれ、といわれるようになって「なんで?」となってるようです。

考えてみれば、住民税は所得のある個人に対して課せられる税金です。企業は「この人に対していくらいくら給与として支払ったか」を自治体に届け出る義務があるのは理解できますが、従業員に代わってその納税分を代理徴収して役所に支払うというのは、税務署の仕事の肩代わりそのものなわけで、本来企業に押しつけられるべきものじゃないんじゃないでしょうかね。

Yさんの例で言えば、従業員は社長であるYさんだけですから、なにも会社の経理を通して天引きの形にしなくても、個人として納付する方がはるかにシンプルです。

会社の経理を通して余計な処理をしないといけないぶん、Yさんにとってはデメリットしかありません。個人の住民税滞納が問題だとしても、個人として住民税の納付を延滞したりしたことのないYさんには全く関係のないことです。

Yさんが顧問契約している税理士さんにきいたところ、どうも今年あたりから全国的に住民税の特別徴収の徹底がすすんでいるそうなので、国の意向なのかもしれません。

税務署には企業の経理作業の負担増への配慮はゼロ

いろいろ調べていると、千葉県のサイトに、住民税の特別徴収の徹底をアナウンスするページがありました。そこのQ&Aを読むと、各自治体の税務署の考えがよくわかります。

(参考)平成28年度から個人住民税の給与天引きを徹底します。/千葉県

Q1.今まで特別徴収(給与天引き)をしていませんでした。なぜ、いまさら特別徴収をしないといけないのですか。

A1これまでも地方税法の規定(法第321条の4)により、所得税の源泉徴収を行う義務がある事業者は、原則として個人住民税の特別徴収を行う義務がありましたが、事業者の個々の事情等により普通徴収での納付を受けている事例が、全国的にも見受けられていました。

近年、法令遵守、公平性の担保、納税者の利便性の向上、滞納発生の抑制のため、特別徴収義務者の一斉指定に取組む都道府県が増えています。

本県においても、平成28年度以降、特別徴収の例外に該当しない従業員及び事業者について、特別徴収を行っていただくこととしました。

「法令遵守、公平性の担保、納税者の利便性の向上、滞納発生の抑制のため」が理由だそうです。企業の事務コストが増える点への配慮は微塵もないようですね。

Q2特別徴収は手間がかかりそう。これをすることで何かメリットはあるのですか。

A2 住民税の特別徴収は、所得税のように、税額を計算したり年末調整をする手間はかかりません。税額の計算は給与支払報告書に基づいて市町村で行い、従業員ごとの住民税額を各市町村から通知しますので、その税額を毎月の給料から徴収(天引き)し、合計額を翌月の10日までに、金融機関を通じて各市町村に納めていただくことになります。また、特別徴収をすると、従業員一人ひとりがわざわざ金融機関へ納税に出向く手間を省くことができます。さらに、普通徴収の納期が原則として年4回であるのに対し、特別徴収は年12回なので従業員(納税義務者)の1回あたりの負担が少なくてすみます。

質問者の意図は「わざわざ会社が税務署の代理ですることで会社側に何かメリットがあるの?」ってことじゃないかと思うんですが、従業員の手間が省けるとしか答えていません。

Q9 従業員数に対して経理担当の社員が少なく、特別徴収の事務を行うことができないのですが。

A9特別徴収は事業者の義務であり、経理担当が少ないことを理由に特別徴収を行わないことは、法令上認められませんので、御理解と御協力をお願いします。

ここでも「法律に定められたことだ」の一点張りです。すでに所得税の源泉徴収やってるんだからできるだろ、ってことでしょうか。

税務署の仕事の肩代わりを押しつけられる会社は怒った方がいい

今回は住民税ですが、毎月源泉で天引きされる所得税だって個人に対して課せられる税金ですから、勤め先である企業が代替わりで支払うのが義務化されてる方が本来おかしいです。

住民税はまだ前年所得が確定してから課税額が決まり、翌年に納付書が届きますが、所得税に至っては、まだその年の税額が確定していない時点で前払いの形で源泉徴収されます。

差額があった場合に、年末調整によって還付されるのですが、それを臨時収入として喜んでいるサラリーマンなんてもうギャグですよ。。いやそこは「金額が確定してない税金を前払いで徴収すんな!」と怒るべきでしょう。

小さな企業の経理をやってる人に聞いても、この源泉所得税の一括納付は結構しんどいそうで、1年に2回、従業員全員分の半年分の所得税を会社が一括納付しないといけないんですが、毎年、該当の月の資金繰りに非常に苦労するんだそうな。

アメリカでは個人の確定申告が義務づけ

このように日本では税務署の下請けみたいな作業が法律で企業に義務づけされてるわけですが、たとえばアメリカだと逆に、一定以上の所得のある個人は基本的に毎年確定申告をする義務があります。 納税義務があるのはそれぞれの個人ですから、こちらの方が自然ですね。

一方、勤め先の企業に課せられるのは、「従業員の確定申告に必要な書類を作成し、付与する義務」のみ。納税者である個人に代わって代理で納付するなんてアホらしい義務はありません。もしそんなことが義務づけされるなんてことになったら、企業からも個人からも猛反発でしょうね。まぁ、なんといっても国民皆保険制度の導入にすら反対するような個人主義のお国柄ですから。

上の千葉県の税務署に対するQ&Aにあったように、源泉徴収みたいな下請け作業を受け入れてくれる企業に対しては、メリットとして法人税を3パーセント軽減するぐらいしてもバチは当たらないと思うんですが、どうなんでしょう。