安曇野市へのふるさと納税でVAIOパソコンがもらえるのって中小企業の節税対策に使えないの?

やわなべです。

長野県安曇野市が「ふるさと納税」制度の返礼品としてVAIOパソコンを贈るようにしたところ税収が一気に増えたんだそうです。

長野県安曇野市が6月から自治体への寄付制度「ふるさと納税」のお礼として市内に本社と工場がある電子機器メーカー「バイオ」の高性能ノートパソコンを採用したところ、わずか1カ月で前年度1年間の25倍もの寄付申し出があった。

(参考)ふるさと納税:「バイオ」パソコンで急増 長野・安曇野 – 毎日新聞

「パソコンあげるプラン」を掲げた結果、ふるさと納税額が25倍にも上がったんだそうな。その額、実に1億2751万円

個人的には「ふるさと納税」は、その仕組みのいびつさから、いい印象を持ってないんで、利用の予定はありません。その辺りは以前に書きました。

ポイントは、「ふるさと納税で納税先として選んだ自治体の税収が増えた分、本来住民税を納めるべき自治体の税収が減る」ということ。

上のニュースだと安曇野市が1億2700万円もの臨時収入を得た影で、それ以外のどこかよそ自治体の税収が1億2700万円減ってるわけですよ。

いわばこれ、住民税収をめぐる自治体同士の壮絶なバトルロイヤルなわけで、企画した国は自分の腹(国家財政)はほとんど痛まないんで高みの見物です。それどころか、上のエントリーを書いたあとでさらに制度を変え、2015年からは利用枠を拡大し、確定申告も条件付きでいらないように変えてきました。

(参考)総務省|ふるさと納税ポータルサイト|トピックス|制度改正について(2015年4月1日)

・全額控除されるふるさと納税枠が、約2倍に拡充されました。
・ふるさと納税を行う自治体の数が5団体以内であれば、控除に必要な確定申告が不要になる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が始まりました。

地方自治体同士の殴り合いを「いいぞもっとやれ」と国が眺めてるようなもんですね。それでいて国民からは歓迎されるし、いいことづくめです。

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法人でもふるさと納税で節税メリットがあるのか?

また前置きが長くなりました。そもそもの疑念は「ふるさと納税でパソコンがもらえるなら中小企業が節税、かつ経費削減のために使えるのでは?」という点。で、結論から言うと「んなこたぁない」。

法人でもふるさと納税をすることは可能なんですが、そのメリットは個人の場合と大きく違います。国税庁のサイトを引用しますと、

国や地方公共団体への寄附金と指定寄附金はその全額が損金になり、それ以外の寄附金は一定の限度額までが損金に算入できます。会社などの法人が支出した一般の寄附金については、その法人の資本金等の額、所得の金額に応じた一定の限度額までが損金に算入されます。

(参考)寄附金を支出したとき|税について調べる|国税庁

どういうことかというと

・個人の場合:支払う住民税をよそに振替できる
・法人の場合:支払う寄付金が経費として認められる

という違い。個人の場合、制度を利用しようがしまいが支払う税金の額は変わりません。変わらないけどそれで返礼品がもらえるんならその分おトクだよね、という話。

これが法人の場合は、税金の振替ではなくあくまで「寄付した金額が経費として計上できるよ」、というだけです。

たとえば年間通して今期は100万円の利益が出そうだという零細企業があったとしましょう。利益にかかる法人税はざっと4割ですから、そのままだと利益のうち40万円を法人税で徴収されます。そこで、多くの企業は、財務諸表の見栄えを損ねない範囲で、なるだけ利益を小さくしようと努力するわけです。

利益=売上 – 経費

ですから、年度末までに100万円の経費を上乗せできれば利益はゼロとなり、法人税の支払いも不要となります。(厳密には法人にも住民税がありますし、売上にかかる消費税は関係ないので税金がゼロになる、ということではない)

法人が「ふるさと納税」制度を使っても寄付金としての費用が経費に上乗せできるというだけで、他の手段による経費の積み増しとなんら変わりはありません。利益が減ればその分法人税額を抑えることはできますが、当たり前ですが支払っただけ手持ちの現金は減りますから資金繰りの悪化につながります。

それに事務用のパソコンが欲しいならわざわざ「ふるさと納税」を経由しなくても直接ヨドバシなりで買って経費に計上すれば済む話です。中小企業であれば、30万円未満のパソコン買っても全額損金に計上できたはず。(それ以上だと減価償却しないといけない)

というわけで冒頭の安曇野市にVAIO目当てでふるさと納税したのはやっぱり個人、ということなんでしょう。

それでも安曇野市ちょっとやりすぎじゃないか?

「ふるさと納税」で食品などの地方の特産品を返礼品とする自治体の中には、ふるさと納税した額で買うよりも価値の高い返礼品がもらえるケースもあるようです。が、この安曇野市のVAIOのケースは自治体のマージン率がかなり高いです。冒頭の記事を再度引用すると、

寄付40万円で市場相当価格約24万円、寄付30万円の場合は同約19万円の機種が贈られる

とのことですから、安曇野市が返礼品のパソコンをメーカーであるVAIO社から定価で調達してるとして、40万円の寄付を受け取って定価24万円のパソコンを送ればいいわけで差額の16万円はまるまる懐に入ります。粗利率40%というボロい商売です。

あるいは、この制度を通じてもらえるパソコンは、

パネルに市制10周年記念ロゴと「made in azumino japan」と刻印が入る特別仕様

とのことなので、VAIO社がその特別仕様のオプション代を大幅に盛ってるという可能性もあります。VAIO社には日本通信と組んで外箱とロゴだけ書き換えた格安スマホを高値売りした前科がありますからねぇ。

ともかく、その1台あたり16万円という差額を誰が払うのかというと、ふるさと納税した人が本来住民税を納めるべき自治体です。その自治体からすれば、住民税を横取りされる上に割高で住民のパソコンを買わされることになるわけで、ご愁傷様ですとしか言いようがないです。

繰り返しますが「ふるさと納税」制度は国が企画、推進する制度なんで、国民がそれを利用することには全く異論はありません。まあ、「ふるさと納税で特産品ゲットしました!」みたいなことをブログで書くんなら同じブログで「住んでる地元を支援したい」みたいなことは書かない方がいいんじゃね、くらいは思いますが。「本気で地元支援したいんだったら、まずそのふるさと納税やめなよ」って話ですからね。

毒々しすぎてまとまらくなってきたので、総務省のサイトからの引用をオチ代わりにしてエントリーを締めたいと思います。

ふるさと納税は、その活用により、地域社会の活性化や人口減少対策にも効果があると評価される等、様々な意義をもつ制度です。こうした点をさらに活かし、政府の最重点課題である「地方創生」を推進するため、平成27年度税制改正において、ふるさと納税制度の拡充が行われました。

(参考)総務省|ふるさと納税ポータルサイト|トピックス|制度改正について(2015年4月1日)