ニトリ創業者の自伝『運は創るもの』が、すべらない話満載で「お値段以上」

やわなべです。

ニトリ社長の似鳥昭雄さんが日経新聞の「私の履歴書」に書かれていた連載が単行本になったようです。著者にもニトリにもさほど思い入れはないのですが、「彼の波瀾万丈ぷりが面白い」との評価がちらほらあったので単行本を買って読んでみました。

はい、先にオチを書きますが「おねだん以上」でした。

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運は創るもの / 似鳥昭雄

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運は創るもの ―私の履歴書

  • 作者: 似鳥 昭雄
  • 出版社: 日本経済新聞出版社

内情を知ってるわけではないですが、「私の履歴書」というのは、おそらく典型的なゴーストライター仕事なんじゃないかな、と思ってます。日経新聞の担当とゴーストライター氏とが、対象セレブに何度もインタビューを行い、その内容をライター氏が連載回数にまとめる形にしていく、という形式。ご本人の文章の巧拙だとか、行間に込めた思いなどは、あまり計れないかな、と思ってます。

ただ、ゴーストライター仕事という推測の下で読んでいくと、似鳥氏がですね、過去の逸話(ほとんどが失敗談)を、今回のインタビュー以外の色んな場所でも「すべらない話」として披露してきたんだろうなー、というのが垣間見れる気がするんですよ。話の展開からオチまですべて完成されたひとつの「持ちネタ」みたいな。「でね、ここからが面白いんだけどさ…」と、嬉々として自分の失敗ネタでインタビュワーを楽しませようとされる姿が目に浮かぶようです。

というわけで、分厚い割にさらっと読める(文字が大きいというのもある)本書の中で私が独断で選んだ氏の「すべらない話」ベスト3を勝手にランキング形式でご紹介。

第3位 友人に寝取られた彼女の父親に慰謝料を請求される

若かりし頃、付き合ってた女性がの部屋に行くと別の男がいて、なんとそれが友人だった。結局、その女性とは別れたが、後日その女性が、お父さんと同伴で現れる。なんと「娘を傷物にした以上、責任をとれ」と結婚を迫ってきた。「それはできない」とはねつけると、今度は慰謝料を請求され….というお話。

一見、「私の履歴書」らしからぬ醜聞ネタで「面白いけどこんな話、ここでさらけ出す必要ないだろww」と思ったんですが、実はこの話、のちほど家具販売の事業と関係してくる見事なオチがあります。このネタはすべらないでしょうねぇ。

第2位 エアドーム店騒動

まだ北海道内で数店舗を展開している1970年代のこと。アメリカ視察の折に見かけた東京ドームのようなエアドーム型の店舗を札幌郊外に出店されたんですが、これがトラブルの元。

オープンの朝、社員から電話がかかってきた。「社長、店がありません」

そしてトラブルはこれにとどまりません。この章は読んでる時声出して笑いましたし、読後も真っ先にここだけ繰り返して読みました。

第1位 遺産を巡って実の母親、兄弟と裁判

失敗系の笑えるネタをさんざん提供してきた最後に出てくる、めちゃくちゃシリアスなお話です。お父様が亡くなられた際、彼が持っていたニトリ株(数百億円の価値)を創業者である著者が引き継ごうとすると、実の母親らが「家族で協議していない」と訴え、兄弟をも巻き込んで裁判沙汰に。これはキツい。

法廷で90歳を超えた母は「昭雄、私の顔と目を見られないのか」と激高する。休憩時間に弟や妹と出くわすと、乱闘騒ぎになった。

まさに骨肉の争い。裁判は最終的に和解となったものの、いまだに著者は実家に出入りできないんだそうな。懺悔めいたこのエピソードを最後に持ってきたのは、編集者の意図もあるでしょうが、それまでの冒険譚めいた波瀾万丈とはトーンが違って、経営者という稼業の困難さを別の側面から感じさせてくれます。

本書の末尾には「プロフェッショナル心得帳」なる氏の訓示のようなものがついていて、氏の仕事に対する思いが簡潔にまとめられていますが、私が、本書を通じて一番感銘したのは、このお言葉にある姿勢でした。

大切なのは男も女も「愛嬌と度胸」だと思う。本人の性格にも由来するが、相手を楽しませるサービス精神は忘れてはいけない。困難な状況の時ほどリーダーにはユーモアが必要だ。

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運は創るもの ―私の履歴書

  • 作者: 似鳥 昭雄
  • 出版社: 日本経済新聞出版社