読んだ本「仁義なき宅配 ヤマトvs佐川vs日本郵便vsアマゾン(横田増生)」

やわなべです。

東洋経済のサイトで紹介されていた「仁義なき宅配(横田増生)」を読みました。

横田氏はもともと物流誌の編集長も務められた記者の出身で、現在はフリーのジャーナリスト。過去にアマゾンやユニクロを取材した本を書いておられるんですが、もともとの業界知識とインタビュー取材に加え、自分自身で、その企業の末端労働者として働く経験による現場ルポを盛り込むことで、オリジナリティとリアリティを高める芸風で有名な方のようです。

その取材手法は企業側からすると煙たい存在のはずで、本書の帯にもこうあります。

「送料無料」の暗部に迫る! 企業にもっとも嫌われるジャーナリストが書く、衝撃のレポ」

企業にもっとも嫌われるジャーナリスト、だそうです。

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ガチで1ヶ月、クール便の仕分けバイトをする

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仁義なき宅配: ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン

  • 作者: 横田 増生
  • 出版社: 小学館

横田氏、本書の取材でもこれだけ体を張ってます。

– ヤマトのセールスドライバーの軽トラに横乗り取材
– 佐川急便の下請けの幹線トラックに同乗して東京-大阪間を往復。荷積み、荷降ろし作業も手伝う
– ヤマトの「羽田クロノゲート」内で、クール便仕分けのバイト

特にクロノゲートでのバイトは、普通にアルバイトの求人に応募して、がっつり1ヶ月間働いておられます。失礼ながら50がらみの著者に夜勤の肉体労働は、かなりキツかったんじゃないでしょうか。

それら潜入系ルポに加えて、宅配大手3社(ヤマト、佐川、日本郵便)のこれまでの歩みや特長をまとめた内容がそれぞれ1章ずつあって、宅配ビジネスの基礎知識、歴史、現場の実態と、この1冊でほぼ網羅できる内容となっています。

著者は最初、ヤマトの広報に真正面に取材を持ちかけて断られるんですが、バイト中に見た社内誌などの情報などを交えて再交渉。結局、今年から社長に就任する長尾氏(当時執行役員)への取材の機会を得ます。取材はクロノゲートで行われたんですが、末端のバイト君が、いつもの現場を、ヤマトの次期TOPに案内されるという、シュールな光景が展開されています。

そのヤマトといえば、2年前の2013年、朝日新聞によって、クール便の仕分け作業を常温の環境で行っていることを暴露され、話題となりました。

クール宅急便、常温で仕分けしていた クロネコヤマト、扉開けっ放し・箱は常温で置きっぱなし

で、奇しくも著者が羽田クロノゲートで担当することになったのは、まさにその、クール便の仕分け作業

その夜勤の現場はベトナム人ら外国人も多いバイトが中心。連続で2ヶ月を超えて勤務できない制度、現場での初期指導の乏しさ、そして問題発覚後1年経過してのクール便の温度管理…、すべての拠点でそうとは限らないでしょうが、末端の現場では、いまだ、いろんな問題をかかえていることが明らかにされます。

クロノゲートのバリューネットワーキング構想

宅配業は、コストの中の人件費が5割以上を占める、典型的な労働集約型ビジネスで、特に、最近のネット通販による「企業から個人宛」の荷物の急増によってその規模はますます拡大中です。大荷主からの運賃値下げの圧力も強く、2年前に佐川急便がアマゾンの宅配から撤退したのは記憶に新しいところ。

2013年にヤマトが打ち出した、クロノゲート拠点をベースとしたバリューネットワーキング構想も、ベース拠点の荷物処理効率アップもさることながら、拠点そのものに倉庫機能などの従来なかった付加価値を持たせ、荷主企業に運送だけでないプラスアルファのサービスを提案することで差別化、売上アップを目論むものです。

羽田クロノゲート 見学コース | ヤマト運輸

見学先としても大人気な羽田クロノゲートの中には、家電の修理拠点や、医療機器の洗浄施設なんかもあります。

たとえばヤマトがメーカーから家電の修理を委託で受ければ、個人が修理を依頼した製品は、まったくメーカーの手元に行くことなく、ヤマトの中だけで修理プロセスが完結します。ヤマトとしては付加サービスによる売上アップに加え、企業への配送プロセスが省略できるぶん、2重のメリットがあるわけですね。

ただ、一番の頭痛の種だと思われる「増え続ける企業から個人宛の荷物」の効率化を左右するのは、やっぱり仕分けやセールスドライバーなどの末端の人員なわけです。

今後、関西、中京エリアにもクロノゲート拠点を設けたあかつきには、「東京-大阪間をまたいでの同日発送を可能にする」、なんて構想があるようですけど、その頃のセールスドライバーの負担はどうなってるんでしょうか。

ほんとに同日配送なんて必要なのか?

この潜入取材で明らかになった事象をあげて、ブラック企業だの、ルール違反だのといった批判をするのはたやすいでしょう。

が、著者も指摘するように、それらの根源にあるのは「送料無料」「時間指定」といった顧客の過剰なサービス要求と、家庭向け配送全体の2割にも及ぶ不在率とその再配達需要、そしてアマゾンなど大手荷主からの運賃値下げ圧力です。

それらの問題を解消していかないと、そのうち宅配物流全体がパンクを起こす事態になるんじゃないでしょうか。

最後に、著者がヤマトの一員として過酷な仕分けバイト中に感じた、偽らざる感想を紹介しましょう。

よく宅配の箱に書いてある「ドライバーの方へ。お客様が心待ちにしている大切な商品です。丁寧に取り扱ってください」みたいなシール、仕分け作業中の著者には憤りしか感じられなかったそうな。

そうした荷主の多くはネット通販業者で、大口契約による割安の特別単価で配送してるわけですよ。(しかもその手のシールの多くは荷主でなく、送り元のヤマトの営業所がサービスで用意してたりする)

背後の実情を知りつくす著者からすれば、それより「この荷物は正規運賃を払って発送しています」とでも書いてくれれば「よし、丁寧に扱ってやろう」という気持ちになるんだとか。

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仁義なき宅配: ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン

  • 作者: 横田 増生
  • 出版社: 小学館

「潜入ルポ アマゾン・ドット・コム (朝日文庫)」販売ページヘ

潜入ルポ アマゾン・ドット・コム (朝日文庫)

  • 作者: 横田 増生
  • 出版社: 朝日新聞出版