(読んだ本) ザ・粉飾 - 暗闇オリンパス事件

やわなべです。

ダイソーの100均グッズみたいなタイトルですが、4年前「サムライと愚か者」というタイトルで出版された単行本の文庫版です。2011年のオリンパスの巨額粉飾事件を告発したジャーナリスト、山口義正氏によるルポ本ですね。

初めて読んだんですけど、これ、半沢直樹風な経済小説よりぜんぜん読みごたえがありますね。一気読みでした。

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ザ・粉飾 – 暗闇オリンパス事件

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ザ・粉飾 暗闘オリンパス事件 (講談社+α文庫)

  • 作者: 山口 義正
  • 出版社: 講談社

(あらすじ)
著者は友人であるオリンパス社員から自社に不正会計の動きがあることを知る。彼から入手した内部資料を元に雑誌FACTAのスクープ記事として告発。オリンパスや他のメディアにも黙殺される中、半年前に就任した英国人社長がこの記事を読み、実験を握るワンマン会長やファイナンス担当役員を詰問、情報提供を渋るなら独自ルートで調査すると表明。激怒した会長はどっかのドラマで見たことあるような会議劇で社長を電撃解任。前社長は自国へ逃れ、現地の有力経済紙や事実をぶちまけ公的機関に告発、国際的にスキャンダルに発展、FBIも捜査に乗り出す。そんな中、著者は不正流出資金の流れを追っていく暗闇の人脈が浮かび上がってくる。。。

と、まあ小説さながらのスリリングな展開です。ウッドフォード元社長の手記が映画化されるとか、されたとかいう話もうなずけますね。加えてFACTA発行人である阿部氏の、挑発しながらも渇いた文章もまた凄みがあるんですよ。どうやったらこんな文章書けるんですかね。

FACTAleaks――オリンパスへの公開質問状と宣戦布告:阿部重夫発行人ブログ:FACTA online

あれから4年が経って、オリンパスの株価も事件発覚前の水準、というかそれ以上に戻っています。直近決算では、損失隠しに使われた「のれん代」の残高も償却が進んで減ってきてるようですし、事件後10%前後まで落ちた自己資本比率も30%台まで回復しています。

ただ、まだ旧取締役に対する損害賠償請求訴訟(今年3月に一部和解)に加え、国内外の機関投資家、株主から損害賠償請求を抱えてますし、損失隠しスキームを指南した金融ブローカーらの裁判も進行中です。同社のカメラやレンズは買っても株を買う気には到底なれないですね。

FACTAは今年に入ってからも、新たに中国子会社の贈賄疑惑記事でオリンパスを告発しています。

オリンパス「二度目の不祥事」:阿部重夫発行人ブログ:FACTA online

著者もまた本書の「文庫本へのあとがき」で、先日露見した「パナマ文書」の中にオリンパス事件で暗躍した人物らの名前を見つけ、それを次作で告発予定であることを示唆しています。

ICIJのHPで検索すると、本書に出てくる”得体のしれない金融のプロ”たちの名前が見つかった。(略) そこには国内外の捜査当局からオリンパス事件への関与が疑われながら、逮捕を免れた人物の名も見つかった。

私の次作は、これまで貯めこんできた様々な資料とともに彼らを丸裸にする内容になる。

著者もそうですが、私も「オリンパスが上場廃止になればよかったのに」とか「菊川氏らは執行猶予なしのもっと厳しい罰を課せられるべきだった」とか言いたいわけではありません。そんなのに溜飲を下げても問題の根本解決にはなりません。

この事件は、今回のオリンパスに限らない、さまざまな問題を提起したと思うんですよ。

  • 株主への情報公開を軽視しがちな日本企業のIR問題
  • 企業の会計不正に加担した者に対する責任問題
  • 内部告発者が実質的に保護されない、公益通報者保護制度の欠陥問題
  • 投資家の保護を優先的に考えない証券取引所(てか東証)問題
  • 企業の不正にまともに切り込めない国内ジャーナリズム問題
  • 監査法人が会計不正の抑止力になってない問題

特に最初のFACTA経由の著者の質問状に対するゼロ回答は、ひとりのゴミ投資家の端くれとして「そりゃあないだろう」と思います。当時あれを見て問い合わせした株主に対しても同じ塩回答をしたんでしょうかね。内部の、それも当時社長職にあるウッドフォード氏からの情報開示要求に対しても同じ態度となれば、そりゃあ氏も態度を硬化させ「よろしい、それならプロキシーファイトだ」って話になりますよ。

本書を読んでの後味の悪さは、組織犯罪に加担した人々に妥当な責任追及がされていない、というより、発覚した問題に対する当事者含め周囲の態度です。当該企業の役員も、銀行など大株主も、監査役も、報道メディアも、証券取引所も、すべてが事なかれ主義でなるだけ穏便に済まそうという空気が自然と形成されるところになんともいえぬ寒気を感じるわけですよ。7章のタイトル「官制粉飾決算」ってのがまさにそれ。

本件ほどの粉飾案件にしても、もしFACTAが疑惑をぶちまけた時点で外国人であるウッドフォードさんが社長じゃなかったら、彼が追放後に帰国した本国で告発行動に出なければ、FACTAのスクープは黙殺され、情報開示や事実究明も大幅に遅れた可能性もあるわけです。

本書は、もちろん経済小説的読み物としても優れてますが、この内容を咀嚼し、善悪の判断をできるくらいの知識は、社会人である個々人が持っておくべきだと思いました。特に起業を目論むような人は、もし成功したら、否応なくこのあたりのファイナンス沙汰に巻き込まれるわけですしね。

そして、あまりにも本書が面白かったんで、これの東芝版を期待してこれと、

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東芝 粉飾の原点

  • 作者: 小笠原 啓
  • 出版社: 日経BP社

これを追加で購入。

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会計士は見た! (文春e-book)

  • 作者: 前川修満
  • 出版社: 文藝春秋

オバマさんおすすめの洋書、全然読めてない。。。(汗)