「日本財政を斬る」「東芝 粉飾の原点」ほか、今週読んだ本5冊

やわなべです。

一定ペースで本は読んでるんですが、書評エントリーにするのは気が向いた時だけでした。書評って引用箇所を転記したり、ちゃんと書こうとすると結構時間かかるわりに、実はあまり読まれないという、コスパの悪いジャンル、なんですよね。

そんなもので無駄にエントリー数稼いでもしょうがないんで、まとめてメモ書きしとこうかな、と。というわけで今週の1冊、「日本財政を斬る」から5冊ご紹介。

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「日本財政を斬る」 米澤潤一著

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日本財政を斬る 国債マイナス金利に惑わされるな

  • 作者: 米澤潤一
  • 出版社: 蒼天社出版

今週の一冊は間違いなくこれ。いやー、すごい本です。ただ、国債実務の専門的な話を含むのに加えて2400円という価格。にしてはタイトル少し軽すぎませんかね。これじゃ経済評論のコーナーに並んでる薄っぺらな「煽り本」みたいです。

著者はかつて大蔵書の理財局国債課長をつとめられた方。我が国の財政上、大きな足かせとなってる国の借金、国債発行の現場担当者であられたわけです。

実務にあたられてた昭和50年代を中心に、概略版「日本国債発行史」としての資料価値もあり、当時のこみいった裏話的エピソードはちょっと他では読めない内容です。もちろん、その知見をふまえた現状打破への論理的な提言にも説得力を感じます。

それにしても昭和49年度の「税収区分年度帰属区分の変更」ってのはすごい。この年、国は歳出が歳入を上回る赤字決算の状態だったんですが、それを想定した法制度がないという建前のもと、年度末3月決算の法人税収を繰り上げて歳入計上するなんてことをしてます。一般企業における粉飾行為です。それ以外にも東芝で言う「チャレンジ」な調整の数々によって、そのツケがどんどん未来へと持ち越される悪循環となってるわけですね。

著者は「国債発行の膨張史」という、もっと教科書的な本を書いておられ、本書はそのライトな「読み物」版を意識して書かれたんだそう。ただ、これでもまだ一般向けには難しいので、この冷静な筆致は保ちつつ、さらなるライト版を新書あたりで出版されることを期待したいです。

本書のテーマはほんと全国民にとって喫緊の問題なんですけど、地球温暖化と同じで、さしあたって目の前の生活には影響ない上に、問題が大きすぎて個々人としての具体的なアクションプランが見えないんですよね。

「東芝 粉飾の原点」 小笠原啓著

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東芝 粉飾の原点

  • 作者: 小笠原 啓
  • 出版社: 日経BP社

2015年に「不適切会計」が発覚、歴代3社長が辞任する事態となった東芝ですが、それで終わりではありませんでした。第三者委員会による調査でも俎上にのぼらなかった原子力事業の海外子会社、ウエスチングハウス社が赤字を隠蔽してるんじゃないかと取材を続けていた日経ビジネス記者による追求劇。

前社長が辞任したあと、東芝社内でも事情調査のために自前の内部告発制度を設けたんですが、記名制だったために社員は誰も応じなかったそうな。当たり前ですね。で、日経ビジネスがネット中心に情報提供を呼びかけたところ、これが受け皿となって、まあ、集まる集まるw イントラシステムから拾ったのか、上層部の謀議ともとれるメール文面がそのまま掲載されたりしてて、別の意味でこの会社大丈夫なのかな、と思ったり。

結局、日経ビジネスの追求を認める形で、東芝は2015年11月にウエスチングハウスの赤字状況を公表。その後、2016年3月期の決算で最終損益が5500億円の赤字になる見通しを発表することになります。(最終確定赤字は7087億円)

本書も指摘するように、やはり2006年西田社長時の「ウエスチングハウス買収」という大博打がすべての発端だったんでしょう。その2年後にリーマン・ショック、さらに3年後に福島原発事故で原発需要が世界的に停滞するという地合いの悪さはあったものの、大博打を打つだけのファイナンス面の体力が欠けてたんじゃないかなと。

ウエスチング社の減損を避けていた背景に、減損で純資産が目減りすると、融資を受けてる銀行との取り決めに引っかかって即刻融資の返済を迫られる可能性があった点が指摘されています。金融機関に対しては非常に弱い立場にあったようで。自己資本比率って大事だね。

そんな頑なに拒否していた減損処理ですが、2016年に入ってキャノンが子会社の東芝メディカルを高値でお買上げ、しかも代金を即金でお支払いしてくれるというマジ天使ぶりで、同会計期に2000億円の利益が上乗せされる見通しが立つや「やっぱ、もう一度減損テストをやり直したところ、今期に減損すべきという結論になりました」となったのはコントかよ、と思いました。

しかもこの数千億円規模の売却、独禁法の審査をクリアするために、資本金3万円のダミー会社を介するというトリッキーな手法を使ってて、買収交渉でキャノンに競り負けた富士フィルムが「こんなんおかしいやろ」と疑義を申し立ててます。

こんな調子で、まだまだツッコミどころはあるわけですが、これら全てが東芝特有の問題かというとそうではなく、随所で「ああ日本的だなあ」と感じるんですよね。ある意味クールジャパン。「チャレンジ」「ストレッチ」に象徴されるパワハラ風土も、特に誰がということもなく、長年かけて築き上げられたもので、自分ももしこの組織の中にいれば、この風土に染まったのかもしれないなぁ、と感じました。

「会計士は見た」 前川修満著

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会計士は見た! (文春e-book)

  • 作者: 前川修満
  • 出版社: 文藝春秋

創業家親子のお家騒動が記憶に新しい大塚家具、経営破綻したスカイマークなど、話題になった企業の実情を財務諸表から見てみましょうという会計コラム的な本。アグレッシブな日経ビジネス取材陣とは打って変わって著者である「会計士が見た」のは、一般公開されている財務諸表だけ、です。

本書も最後に東芝を取り上げてるんですが、著者がこれを執筆してたのが2015年8月。一方、東芝は、不適切会計訂正後の2015年3月期の決算発表が遅れに遅れて、結局8月中にも間にあいませんでした。

本当なら著者は訂正後の2015年3月期の決算を見て、推理内容の答え合わせをしたかったでしょうが、逆に言えば、訂正前の不適切な書類から、ここまでのことが推理できる、ということを示した点で逆に貴重かもしれません。

8月時点で表沙汰になってなかった、ウエスチングハウスののれん代減損の可能性も指摘してますし、粉飾がなければ計上されなかったはずの繰延税金資産の残高の大きさから、損失計上すべき額はまだまだ増えると予言していて、これは見事に当たった格好です。さらに粉飾された利益に基づいて支払い続けられた配当についても追求されるべきだと指摘しています。

ただ、最初に書いたように、よくも悪くも財務諸表からのみの推察なんで「え、それだけ?」と肩透かし的な章もあります。会計士の方なら「この程度なら自分でも書ける」と思う人いるんじゃないでしょうかね。

ターゲット的には「30分でわかる財務諸表の読み方」みたいな本を読んだあと、ケーススタディ的に読む本かな、と。ボリューム的に新書でもよかったんじゃないでしょうか。

「健康食品ウソ・ホント」 高橋久仁子著

トクホよりさらに法的制限の緩い健康食品カテゴリーとして、2015年にはじまった「機能性表示食品」制度。アベノミクス規制改革の一環として「国民の健康増進のため」ではなく、健康・医療関連産業の発達を通じた「国富拡大」の観点から導入された仕組みです。その申請も指定の書式で書類を届けさえすればOK、内容を国は審査せず、その代わりに申請内容はネット上に開示しますよ、というもの。

導入動機はあからさまに経済的な思惑なんですが「効果の妥当性について国は審査しないけど、申請内容は全部ネットに開示するよ」というスタンスは、個人的には時勢にあっている、と感じました。行き過ぎた行為があれば、先日のPCデポみたく、ネット経由で吊るしあげられる可能性があるわけで、ある意味、お上よりそっちの方が怖い。

著者は「紛らわしい広告文句に惑わされず、普通に食べましょうね」と結論する真面目な方ですが、ブルーバックス読むような層は、ある程度リテラシーが備わった人でしょうから、むしろ悪質な広告や商法に遭遇したらどう処理するべきか、「この成分にホントにこんな効能あるの?」と疑問を感じたときに、どうやって根拠となった科学論文にたどりつけるか、といった実践的手順を示した方がよかったんじゃないでしょうか。そうすれば、著者と同じ目線でウォッチャーとして監視する目を増やす効果にもつながるんじゃないかと。

「ゼロからトースターを作ってみた結果」 トーマス・トウェイツ著

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ゼロからトースターを作ってみた結果 (新潮文庫)

  • 作者: トーマス トウェイツ
  • 出版社: 新潮社

4年前の本で、極東ブログさんで紹介されてて「面白そう」と思ってそのままだったのが文庫になってたのでGET。てか当のfinalventさんが文庫版の解説を書いておられますね。

タイトル通りのチャレンジネタを綴った学生の企画ブログの書籍化で、今だと「リアルでマインクラフトやってみたwww」的なイメージでしょうか。元が個人ブログなんでさらっと読めますが、文明社会で麻痺しきったモノに対する価値観を思いきり揺さぶられます。

ぶっちゃけ完全に成功するとは本人も思ってなかったようで「当初の計画通りには動かなかったよ」という簡潔な報告のあと、ここぞとばかりに消費社会批判を述べたてるあたりは「お前、最初からそれ言いたかっただけやろ」と思いましたけど。

ハイライトは「電子レンジでできる、お手軽溶鉱炉クッキング」と、その成功に味をしめて、外装部品のプラスチックも原油から作りたいと無邪気に言い出す著者が、相談を持ちかけた大学教授やBP(世界3位の国際石油メジャー)の広報の人から一様に、

「プラスチックなめんな。人間が鉄器時代からプラスチック生産までどれだけ時間費やしたと思ってるんだ」

とすごまれるくだりでしょうか。

まとめ

気がついたら1冊でじゅうぶん1エントリーになりうる分量書いてしまってますが、書評まとめ書き、いいですよ。なんちゃってキュレーターになったみたいで。

ただし、今後も続けるかどうかはわかりません。本を読むのがノルマみたくなるのはイヤなので。