「サイボーグ化する動物たち」「超金融緩和からの脱却」ほか、今週読んだ本5冊

毎週が読書週間、やわなべです。

なんとなく週5ペースが固まりつつあります。幅広いジャンルの本を楽しもうとしたらこれくらいのペースは必要なのかな、という気も。まあ、幅広いジャンルの本をたくさん読んだところで人生何も変わりませんが。

えー、今週の1冊は「サイボーグ化する動物たち」です。

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サイボーグ化する動物たち / エミリー・アンテス

人口部品を使っての動物治療などのテーマもありますが、メインのテーマは遺伝子操作による新種作成、あるいは、特定個体のクローン生成といった話題。個人的にはこのテーマ1点に絞って書いてもよかったんじゃないかな、と。

クローン羊のドリーが誕生したのは2003年ですが、その後、クローン技術は、畜産ニーズを超え、ペットや絶滅危惧種の繁殖、といった方面にも展開されています。一部、ビジネス化を目論むエピソードもあり、そのあたりはまんまSF小説なわけですが、クローンによって健康な生体が生まれる可能性はまだ低く、倫理問題以外でも一般化はまだ先のよう。

本書の内容に倫理的不快感を感じる人は、その不快の出どころを一度じっくり自問してみるのもいいかもしれません。これまで人類が遺伝学ベースで長年品種改良を重ねた結果が今、私達の食卓にのぼっている動物や植物なわけで、それが遺伝子工学に舞台を移しただけ、とも言えますからね。

著者は新進気鋭のサイエンスライターで遺伝子操作などにもわりと肯定的です。倫理的な重い問いかけを含む内容ですが、彼女の無邪気さで救われてる気が。

超金融緩和からの脱却 / 白井 さゆり

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超金融緩和からの脱却

  • 作者: 白井 さゆり
  • 出版社: 日本経済新聞出版社

2016年の3月まで日銀の審査委員を務められてた白井さんの新著。マイナス金利の導入含む異次元の金融緩和や、ちらほら話題になってるヘリコプターマネーなどの考察を、日本、米国、欧州での見解をふまえて解説する内容です。ヘタな発言が即、株価や為替に影響する立場に長くいらしただけあって、慎重・丁寧な解説ぶりです。

2016年1月のマイナス金利の導入を問う議決で彼女は反対派でした。その理由が本書で述べられています。審議の時点で、国内の需要はすでに回復していて効果に疑問を感じたのと、金利政策と同時進行で、資産の買い入れ(国債やETF)額を増やしいる状況にあって、いずれ買い入れを減らすフェーズでの切り札としてマイナス金利を温存しておくべきではないか、という説も。実際、マイナス金利は銀行などの不評をかっただけで、さほどその効果が見えてないわけで、結果論ですけど、やらない方がよかったのかもしれませんね。

他にも話題のヘリマネの解説あり、「なぜ世界の中央銀行のインフレ目標値は2%なのか」といった論考あり、目下最新の金融政策の教科書的として座右に置いといていい本なんじゃないでしょうか。巻末に用語索引がほしいくらいです。

巨人軍「闇」の深層 / 西崎 伸彦

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巨人軍「闇」の深層 (文春新書)

  • 作者: 西﨑伸彦
  • 出版社: 文藝春秋

今年大いに名を挙げた週刊文春の記者による著書。選手数人が対談することになった野球賭博問題や、清原の逮捕、といった記憶にあたらしい話題から、原前監督らのスキャンダル事件など、巨人をとりまくダークサイドとその処理班として暗躍する読売社内のコンプラ軍団といったトーンで書かれています。

ただ本書を読む限り、読売新聞社のコンプラ軍団は、このクラスの大企業とすれば普通に仕事してる印象ですし、原さんのケースはむしろコンプラ抜きで個人で先走ってこじらせてしまったわけだし、清原さんのはむしろもらい事故だし。

この本通じた一番大きな闇は、巨人に限らず2000年代まで公然と続いていた私設応援団の横暴ぶりと、清原和博という一個人の抱える闇です。スケールが違います。

震える牛 / 相場 英雄

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震える牛

  • 作者: 相場英雄
  • 出版社: 小学館

2012年に出た社会派サスペンスで、WOWOWでドラマにもなった作品。外国人によるカネ目当ての居酒屋強盗殺人事件を追っていったら実は計画的な犯罪で、その背後には、BSE問題、食品偽装問題、地方の過疎化問題などのこの国の暗部がからんでいた、という内容。

どうやら著者は警察組織の内情には明るいようで、組織内のやりとりにはリアリティを感じるんですが、物語の背景にあるBSE問題や食品偽造といったネタの扱いはわりと表層的で、そこまでリアリティを感じませんでした。人物描写もやや浅く、話の展開もいろいろ都合がよすぎる。でも最後の話の落とし方はうまい。

作中、巨悪として描かれるオックスマート社(モデルはどう見てもイオン)の裏仕事を仕切る経営企画室長が、上の本で出てきた読売巨人軍のコンプラ軍団よりよほどやり手でファンになりそうです。同じ刑事シリーズ続編として「ガラパゴス」という作品が出てますが、むしろこの室長の続編が読みたい。

大麻入門 / 長吉 秀夫

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大麻入門 (幻冬舎新書)

  • 作者: 長吉秀夫
  • 出版社: 幻冬舎

先週読んだ「縄文の神」で、日本人は縄文時代から麻と寄り添って生きてきたことが書かれてました。神宮大麻(伊勢神宮の御札)もそう。戦後のアメリカ占領時代にGHQに押し付けられた大麻取締法によって、過剰に規制されてる面があるらしい。そのへん、基礎的知識がコンパクトに纏まってる本をと思ってこれをチョイス。知りたいことはだいたい網羅されてました。

覚醒剤と違って身体依存もない大麻は危険性も低く、それに比して、医療、研究用途であっても規制が厳しい現状は、見直されてしかるべきなんでしょう。中島らもさんは大麻開放論者でしたが、その理由は、大麻が持つ眼圧を下げる効果によって、氏が患ってた緑内障の治療に有用だから、なんですよね。

ただ、オランダやカナダの事例を見ても、あくまで「決められた場所での少量利用なら罪に問わない」というもので、「危険度はアルコール以下」って解説とちょっとズレを感じます。