「人間さまお断り」「 御嶽山噴火 生還者の証言」ほか今週読んだ本5冊

やわなべです。

今週の1冊は「人間さまお断り」 。SF小説よりディストピアな内容に、読後1時間ほど、その場にうずくまって悶々と考えてました。「御嶽山噴火 生還者の証言」の噴火の描写にはただただ戦慄。ウンベルト・エーコの新刊読んだのも今週でしたか。書籍代はかさんだけど充実の1週間でした。

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人間さまお断り / ジェリー・カプラン

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人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き

  • 作者: ジェリー・カプラン
  • 出版社: 三省堂

AI(人工知能)の黎明期から、スタンフォード大のAI研究所の研究職にあり、その後はシリコンバレーでベンチャー創業にもかかわって、不自由しないほどのお金も稼いだ著者が、軽妙な語り口ながら、冷徹な未来を語ります。「個々のAIは法的に法人格を持つべきか」といった問題提起など、AIの技術よりも、それがどう既存の人間社会の諸制度と噛み合わなくなっていくかにポイントをあてています。

よく言われる「属人的な仕事の多くが近い将来AIに取って代わられる」という問題にとどまらず、そのAI化(アルゴリズム化)の仕組みを作った少数の人間(企業)が勝ち組となって富を独占、負け組との経済格差がどんどん開いていく、という未来が迫っている、というか、すでに高速取引業者やアマゾンといった形で現在進行中である現実を淡々と示されます。

読者個人としては自分や子供の未来を見直すきっかけになるでしょうし、政府や公的機関などの立場にある人は、これまでの弱者に対する援助や補助の制度を根本的に設計し直さないといけないということに気づくんじゃないでしょうか。

御嶽山噴火 生還者の証言 / 小川 さゆり

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ヤマケイ新書 御嶽山噴火 生還者の証言

  • 作者: 小川 さゆり
  • 出版社: 山と溪谷社

警戒レベル1で登山規制もない中、2014年9月、突如噴火した御嶽山。登山者58人の方が亡くなられました。山岳ガイドの著者は、翌日にガイドする予定の下見として登山中に被災。本書は著者が経験した容赦ない自然の恐ろしさを、臨場感あふれる描写でつづる迫真の手記です。

添付の地図や噴火直後の写真と照らしあわせながら読んでたんですが、噴火口の近くでも、場所によって避難する時間と選択肢に余裕があった地点と、そうでなかったところがあったことがわかります。著者はどちらかというと余裕がないポイントで被災したんですが、噴煙を見てすぐ(カメラで写真など撮らずに)命を守る行動に移ったことが生死の境目になったことがわかります。

山岳ガイドという立場で被災し、そして生き残ったという事実と向き合いつづけた著者。「自分はこの体験を後世に適切に伝えないといけない」という使命感を本書からひしひしと感じます。

ヌメロ・ゼロ / ウンベルト・エーコ

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ヌメロ・ゼロ

  • 作者: ウンベルト・エーコ
  • 出版社: 河出書房新社

「薔薇の名前」の作者、最後の作品。舞台はこれから新しい新聞を発行するべく立ち上げたイタリア・ミラノの新聞社、なんですが、その発刊の思惑からしてややこしい裏事情が。集まった記者達や編集長らの会話や態度も、コメディタッチながら、メディアやジャーナリズムへの強烈な皮肉がにじみ出ています。

モチーフとして実際にイタリアで起こった陰謀めいた事件なんかも織り込まれていて、日本とはまたひと味違ったイタリア風の闇を感じられる作品です。現代にあってもどこか中世的な闇を抱えてるんですねぇ彼の国は。モーロ元首相の誘拐暗殺事件とか、赤い旅団とか、背後にCIAが、とか、最近の話ですよねぇ。

とはいえ軽めの作品なんで「薔薇の名前」で挫折した人(私です)でも気軽に読めるのではないかと。

小説 君の名は。 / 新海 誠

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小説 君の名は。 (角川文庫)

  • 作者: 新海 誠
  • 出版社: KADOKAWA / メディアファクトリー

同名の映画の監督によるノベライズ的な作品。新海さんの作品と知ってなければ、よくできたファンタジー作品として、さらっと通り過ぎてしまいそうです。

彼の作品の特徴である、長い時間の経過によって熟成される余韻みたいなものは本作でも感じられますが、「秒速5センチメートル」などの過去作では、それを十字架のように背負いこんでしまう登場人物、そしてその内面の、何を持ってしても埋めきれない空虚さ、みたいなものが、言葉少なに描かれることが多かったように思います。人生を振り返って「これでよかったのかな」と思うような大人達にはそれが強烈な印象を残すんですよね。本作はその空虚さ成分が薄いぶん、若い人にも通じやすいヒット作につながったのかな、と。

古代日本外交史 / 廣瀬 憲雄

少し前に読んだ「逆転の大中国史 ユーラシアの視点から」の関連図書として購入。タイトルは日本史の本みたいですが、4世紀から12世紀くらいにかけての東ユーラシア一帯に興亡した国体間の力学を、外交文書の言葉遣いなどから読み取っていこうという内容です。

日本史目線だとどうしても東アジアや隋、唐といった中国の統一王朝を中心に見がちですが、その唐とて、突厥や吐蕃、渤海といった勢力の中で、微妙なマウンティングで力関係の微調整を行っていたことがわかります。

具体的には、外交使節の謁見の仕方だったり、外交文書上の相手の敬称だったり、一見どうでもよさそうにも思える細かいマナーの差異にあらわれるわけですが、これを読むと、607年、小野妹子らの遣隋使による「日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す。恙無しや」が、いかに当時の外交プロトコルを無視した不遜極まりないものかがわかって、1400年前の話ながらヒヤヒヤさせられます。