『空の旅を科学する』『太平洋の試練 ガダルカナルからサイパン陥落まで(下)』今週読んだ本2冊

やわなべです。

旅行したり、風邪で寝込んだりで1週休んだんですが、それでも2冊しか読めませんでした。さすが12月。今年はもう打ち止めにして、来週あたり2016年読んだ本のベストエントリーでも書きましょうかねぇ。

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空の旅を科学する / 伊藤恵理

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空の旅を科学する

  • 作者: 伊藤恵理
  • 出版社: 河出書房新社
  • 発売日: 2016-09-02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

民間飛行機の運行管理や、管制システムの研究職であられる女性の著書。主な研究分野は、ASAS(航空機監視応用システム)というもので、飛行機に搭載されたAI同士がお互いに通信しながら、安全、かつ効率よく機間距離を保って、空港への発着の効率性アップを目指そうとする技術です。

ただその技術を搭載する飛行機を作ってるのはボーイングやエアバスといった限られた欧米の航空機メーカーなんで、日本国内の研究機関は規模も小さく、予算もあまりないんですね。

そんな状況にあって著者は、グローバルな研究者たちとの偶然的な出会いをひとつひとつたどりながら、着実にこの分野の研究の中心に単身切り込んでいきます。グローバルなキャリアを自分自身でで切り拓いていく様子が参考になりますし、なにより読んでて痛快です。

オランダの研究所では、ASASのシミュレーションソフトが仕様書も開発技術者もいないという状況を知るや、自らシミュレーションソフトのプログラムを書いて提供することを研究所に提案、所属する日本の公的機関に対しても「これはメリットになることだ」と説き伏せます。

ASASをめぐっては、その後、アメリカNASAの研究所とも情報交換するようになるんですが、政治的な立場上、国際共同研究への新規予算を出し渋るNASAに対し、それなら自らが短期滞在研究員としてNASAに乗り込もうと、売り込みをかけたり。なかなかタフな方です。

そんなタフぶりとは裏腹に、本書は全編、軽めな口調で書かれてて読みやすいんですが、行間に孤独や気苦労、それを乗り越えて築いたキャリアへの自負も感じます。グローバルなキャリアを積むには、まずは英語を勉強して、とか、海外留学で人脈を作って、といったマニュアル的な行動だけではダメなんだな、ということがわかりますね。

太平洋の試練 ガダルカナルからサイパン陥落まで(下) / イアン・トール

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太平洋の試練 ガダルカナルからサイパン陥落まで(下) (文春e-book)

  • 作者: イアン・トール
  • 出版社: 文藝春秋
  • 発売日: 2016-03-25
  • メディア: Kindle本

太平洋戦争を、客観的な視点であまねく記そうとするプロジェクトの第2部の下巻です。上巻を読み終えてから3週間たちましたが、ようやく読み終えました。下巻の中心は1944年。米軍がマーシャル諸島からマリアナ諸島を制圧し、いよいよサイパン、グアムに上陸して、日本本土の直接攻撃の拠点を手にするところまで、です。

すでに上巻終わりの時点で日米の形勢は完全に逆転しているんですが、精神主義や権威主義でまったく機能していない日本軍に対し、米軍の戦いは、ますますビジネスライクに組織だった作戦行動に移行しています。盲人同士の殴り合いみたいだったミッドウェーからたった2年でこれですか。

タラワ島の上陸作戦では勝利しながらも戦果に酔いしれる間もなく、予想以上に出た損害の原因と、現場判断が適切だったかを即座に検証、改善策を検討しています。で、その結果は他の指揮官にも情報共有され、他の戦線にも生かされる。

指揮官の人事を査定するドライな能力主義も徹底してますし、大局的判断で次の攻撃ポイントを迂回する判断を下したりと、明確なゴールからトップダウンで個々の作戦に落とし込んで計画している様子が明らかです。しかもサイパンの戦いと同じ時期に地球の裏側で大規模なノルマンディー上陸作戦とかやってるわけですからね。

それに対する日本軍の戦略のなさ、中枢の麻痺っぷり。そんな組織の末端で、戦略も物資もバックアップも無いなか死んでゆく兵士達の惨めさ。特にサイパンは当時日本本土といってもいい状態で、民間人も多く住んでいたわけで、この陥落を皮切りに、いよいよ民間人がこの災厄に巻き込まれていきます。

本作の第3部は2018年に刊行予定とのこと。そこで描かれるであろう終戦までの1年間で、100万人以上の日本の民間人が亡くなったことで、戦争の災禍が語られる場合、どうしてもそこが中心になりがちです。が、この第2部で描かれた時期、戦闘レベルでの敗北が決定的となり、民間人に犠牲が出始めたタイミングは、太平洋戦争というくくりで捉えるなら間違いなくターニングポイントだったかと。なぜこのタイミングで、戦争を終える行動に速やかにシフトできなかったのか、と改めて感じますね。

そして読後にふと3年ぶりくらいに「艦これ」を起動したら泣きそうになりました。

【今週のBGM】 TRIPS & BIBLIOMANIA meets Twoth

TRIPS & BIBLIOMANIA meets Twoth / twoth

2016 / エレクトロニック

マンガ、アニメ、音楽を横断する新感覚クロスメディアプロジェクト、だそうで、このCDとDVD制作資金をクラウドファンディングで募っていたようです

そんな経緯は一切知らずにiTunesの新着で聴いて単純にいいな、と思っただけなんですが、無事に資金が集まったってことですよかったですね。クラウドファンディングってティザー的なプロモーションができるのがメリットですね。

音は、トイミュージック要素を散りばめたピコピコ系とでもいいましょうか。なんとなくフランスのKlimperei(クリンペライ)とか、竹村延和さんあたりのサウンドを思い出しました。

Tout seul sur la plage en hiver / Klimperei

2012 / オルタナティブ

10th / 竹村延和

2003 / エレクトロニック