「土と内臓」「クアトロ・ラガッツィ」他、今週読んだ本4冊

やわなべです。

実はタイトルはダウトです。前回アップ後に1週サボってるんで、正確にはここ2週間で読んだ本ですね。年末年始のサボりぐせがまだ続いてて、なかなか従来の読書ペースに戻りません。去年の末あたりに出た本で、読みたいのが結構たまってるんですが、MacBookPROとかいう高額のお布施を払って金欠気味。。。悩ましいところですね。

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土と内臓 / デイビッド・モントゴメリー、アン・ビクレー

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土と内臓 (微生物がつくる世界)

  • 作者: デイビッド・モントゴメリー
  • 出版社: 築地書館
  • 発売日: 2016-11-12
  • メディア: 単行本

ここんとこ矢継ぎ早に出てる感もある微生物の世界=マイクロバイオーム本です。原題「The hidden half of nature」で、これまで生物学が対象範囲としてきた世界は実は半分に過ぎず、後の半分、目には見えない微生物の世界が、目に見える世界と陰と陽のような関係にある、という内容。

地質学者と生物学者の夫婦による共著で、土壌の中での微生物世界と、私たちの体内の微生物世界とを並列に扱う展開が特色ですが、マイクロバイオームにスポットが当たるまでの歴史に関する記述が多く、最前線の研究による知見が得られるかというと微妙。

著者夫婦が、自らのマイホームの不毛な庭の土壌を、微生物パワーで活性化させたエピソードからマイクロバイオームの世界へいざなう展開には引き込まれるんですが、ちょっと網羅的すぎる感じでしょうか。

クアトロ・ラガッツィ(上) / 若桑みどり

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クアトロ・ラガッツィ (上) 天正少年使節と世界帝国 (集英社文庫)

  • 作者: 若桑 みどり
  • 出版社: 集英社
  • 発売日: 2008-03-19
  • メディア: 文庫

まだ上巻しか読んでませんが、いや、すごい本です。なんで今まで読んでなかったんだろう。

天正時代の欧州への遣欧使節の話なんですが、小説形式ではなく、16世紀カトリック世界と日本の最初の接触を緻密に描いた世界宗教史の一幕です。上巻だけで600ページ近い大著で、ちょうど渡欧した使節がフェリペ2世に謁見したところまで。

主役の少年たちが出てくるのがようやく500ページ目あたり。そこまで500ページを費やして、宗教改革を受け、広く世界に布教しようとするイエズス会ら当時のカトリックの動向と、その前線で日本布教の実務を担った宣教師らの行動、それに対し、戦国時代の大名、朝廷、幕府、庶民らがどのように反応したかが膨大な資料を元に語られます。

宣教師らの残した記録からは、この時代を描いた大河ドラマや歴史小説とは視点の違った日本、そして日本人の描写が見られます。思ってた以上に当時のカトリック布教は成功してるし、幕末の黒船以上に日本史にインパクトをもたらしたことがわかります。

吉野葛・蘆刈 / 谷崎潤一郎

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吉野葛・蘆刈 (岩波文庫 緑 55-3)

  • 作者: 谷崎 潤一郎
  • 出版社: 岩波書店
  • 発売日: 1986-06
  • メディア: 文庫

前回読んだ「紀州」の中で中上健次が「谷崎の『吉野葛』を意識した」と書いてあったんで、どんなものなのか読んでみました。谷崎作品は最初に読んだ「痴人の愛」が個人的に「なんじゃこれ」だったんで、あまり読んでなかったんですよね。

「吉野葛」は奈良の吉野をめぐる紀行エッセイと見せかけて、実はモデルありきのフィクション作品なんですが、紀行文風な吉野の土地とその歴史の描写と、母の面影を追って、その地に自らのルーツを訪ねるエピソードとの絡みが絶妙。文章もめちゃくちゃ美しい。

「蘆刈」も、出だしの水無瀬の描写からの展開は「吉野葛」と似てていいんですが、ちょっと女性恋慕のエピソードがくどい印象でした。

南シナ海でなにが起きているのか / 山本 秀也

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南シナ海でなにが起きているのか――米中対立とアジア・日本 (岩波ブックレット)

  • 作者: 山本 秀也
  • 出版社: 岩波書店
  • 発売日: 2016-08-05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

独自の「大一統」という理論を掲げて、国際法を無視した展開を南シナ海で見せる中国。本書は薄いブックレットで、南シナ海の領有をめぐる歴史と2016年現在の展開をざっと俯瞰する内容です。あくまで論点を並べたものなんで、このテーマを論じるためのとっかかりとして用いるべきテキストですね。

この件、単に一海域をめぐる関係諸国の領有権争いではなく、今や国際法を無視できるほどの力を持った中国による国際秩序へのチャレンジなんですよね。ここで変な先例作っちゃうと今後、他方面にも歯止めが効かなくなるんじゃないでしょうか。