「東芝大裏面史」「鬼神」ほかここんとこ読んだ本5冊

『東芝 大裏面史』 / FACTA編集部

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東芝 大裏面史 (文春e-book)

  • 作者: FACTA編集部(編集)
  • 出版社: 文藝春秋

雑誌FACTAの東芝関連の過去記事集、と言ってしまえばそれまでなんですが、単に時系列に並べられたにすぎないそれらの記事が、東芝という企業が「選択と集中」方針で原子力事業の泥沼にのめり込んでいった結果、想定外の福島の事故を受け、それ以外の事業を切り売りせざるをえなくなっていくまでの一連の没落劇を、印象的に表現する小説技法のように思えてくるから不思議です。最後は、そこまでで語られなかった側面として、国のエネルギー政策の思惑(と失敗)が絡んでいる点を編集長が相変わらずの乾いた口調で締めくくる構成。よくできたディストピア小説みたいですが、悲しいかな、現実なんですねぇ、これ。

『鬼神』 / 矢野 隆

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鬼神

  • 作者: 矢野 隆
  • 出版社: 中央公論新社
  • 発売日: 2017-03-08
  • メディア: 単行本

坂田金時、源頼光、酒呑童子というファンタジー要素満載の物語を、現代風ドラマとして真正面から取り組んだ小説。冒頭、挨拶がわりの金時と熊との戦いシーンからグイグイ引き込まれますが、著者は迫力ある戦闘シーンの描写が実にうまい。最初はあっさりしすぎかなー、と感じた人物描写も、主要人物それぞれにちゃんと見せ場が用意されていて、しっかり構成されているという印象。欲を言えば、あまりにも味付けが現代的すぎたんで(安倍晴明とか今風の老獪政治家みたい)、も少し中世っぽい、わけわかんなさとか、おどろおどろしさなんかが加わってると、さらに深みが出て良かったかな、と。

『戦後歌舞伎の精神史』 / 渡辺 保

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戦後歌舞伎の精神史

  • 作者: 渡辺 保
  • 出版社: 講談社
  • 発売日: 2017-03-31
  • メディア: 単行本

タイトルに「精神史」とあるように、戦後の歌舞伎の推移を出来事ベースではなく、ざっくり俳優たちを世代別に分け、現代演劇と古典芸能との関係性とその意識の変遷、当代の俳優たちがそれをどう解釈し、表現してきたか、といった部分が、著者の深い造詣・考察とともに解析されます。歌舞伎を何度か見ると、その演目の幅広さに「これはどういうスタンスで味わうべきものなんだろうか」という疑問が湧いてきますが、大いにそのヒントになりそう。

『ストレスのはなし』 / 福間 詳

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ストレスのはなし - メカニズムと対処法 (中公新書)

  • 作者: 福間詳 著
  • 出版社: 中央公論新社
  • 発売日: 2017-04-19
  • メディア: 新書

元自衛隊の精神科医としてイラクに駐留した著者が、ストレスとは何か、またどう備え、対処すべきかを具体的に解説する本。従軍医と聞くと、戦場体験によるPTSDのような特殊なストレスが主テーマかな、と思いますが、実は会社の人間関係のように、軽度のストレスが長期にわたって持続するケースこそ重要視されるべきだし、それが安易に「うつ」と診断される風潮への苦言も展開されます。ストレスへの対処法では、ストレスを無くそうとするより、マイナスでもいいから別の種類の刺激を受けることで元ストレスを「薄める」努力をする方が有益だ、という指摘が目から鱗でした。

『一向一揆共和国 まほろばの闇』 / 五木 寛之

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隠された日本 加賀・大和 一向一揆共和国 まほろばの闇 (ちくま文庫)

  • 作者: 五木 寛之
  • 出版社: 筑摩書房
  • 発売日: 2014-07-09
  • メディア: 文庫

先日、富山・金沢を旅行して今だに真宗の影響が強い地域だなーと痛感し、一時的にであれ、一向一揆勢力が自治を行うに至った動向を知りたくて手に取りました。本書は、他の地域もテーマにしたシリーズ化の一部で、話もわりと自由にあちこち飛びがちなんですが、金沢が革命都市だという考えは同感ですし、著者がなぜ蓮如に興味を抱いたかもよくわかりました。