「スタートアップ・バブル」「こわいもの知らずの病理学講義」ほか、ここんとこ読んだ本5冊

『スタートアップ・バブル』 / ダン・ライオンズ

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スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家

  • 作者: ダン・ライオンズ
  • 出版社: 講談社
  • 発売日: 2017-06-13
  • メディア: Kindle本

ニューズウィークをクビになった50代のITジャーナリストが20代中心のスタートアップに入社、あまりの文化の違いぶりに悪戦苦闘する様子を描いたもの。予備知識なしに読んでたが、著者はかつて匿名で「偽ジョブズブログ」を書いて話題を醸したぐらいのテクニカルライターで、ITに疎い堅物老人なんかでは決してない。ウィットと知見に富んだ文章で抜群のエンターテイメントに仕上がってるが、重要な問題提起もはらんでいる。

それは、この手のスタートアップが「20代の、ハーバードやスタンフォードを中退した、ややアスペルガー気味のCEOが、何かよくわからない事業を初めている」というプロトタイプな物語を、そのビジネスの中身や本当の将来性以上に求めているという点。それはとりもなおさず、巨額の資金の投資先を探すベンチャー投資家らのニーズであって、その物語のために、利益よリも売上成長率が過剰に評価され、20代の白人男性が就職したいと思わせる職場や社風作りが優先される。結果、著者が体験したような、ともすれば年齢差別と取られかねない事態が横行することになる。

と、大きなテーマを抱えてることを忘れるくらい著者の文章がとにかく面白い。ハリウッドからドラマの脚本オファーが来るのも納得だわ。

『こわいもの知らずの病理学講義』 / 仲野徹

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こわいもの知らずの病理学講義

  • 作者: 仲野徹
  • 出版社: 晶文社
  • 発売日: 2017-09-19
  • メディア: 単行本

人が病気になる仕組みを学ぶ病理学の入門書。病理学の基礎を抑えながらこのサイズに収めるため、ところどころ基礎的な説明を端折ってるところがタイトルのいう「こわいもの知らず」な要素なんでしょうが、通読して、がんのできる仕組みまでをざっくり理解できた後だと、この本を読まずして医療や健康に関する情報をググって調べたりすることの方がよっぽど怖い。難易度やボリュームは、ちょうどブルーバックスの書籍と同じくらい。前半で細胞・血液の働きを説明し、分子生物学の基礎をざっと見通し他あとで、後半じっくり「がん」の仕組みの説明に取り組む実用的すぎる構成も見事。

『能』 / 安田 登

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能 650年続いた仕掛けとは (新潮新書)

  • 作者: 安田 登
  • 出版社: 新潮社
  • 発売日: 2017-09-14
  • メディア: 新書

見たことあるけど何が面白いのかわからな買った能だが、それは、他の映画など娯楽コンテンツと同列として考えるからであって「能は消費されるべきコンテンツではないのだ」という説明で一気に腑に落ちた感が。能作品の構造が他の日本の文芸にいかに影響を与えてきたかという下りは著者独自の解釈である点を差っ引いても目から鱗で、能の理解がなければ、日本の芸能史の重要な精神要素を理解できないのではないかと思えてきた。

『葉っぱのぐそをはじめよう』 / 伊沢 正名

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「糞土思想」が地球を救う 葉っぱのぐそをはじめよう

  • 作者: 伊沢 正名
  • 出版社: 山と渓谷社
  • 発売日: 2017-01-13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

数ヶ月遅れで関西で放送されてたタモリ倶楽部に著者が出演されてたので。「人間が自然のリソースを消費しながらその見返りとしてできることは自らの排泄物を自然に返すだ」という信念の元、数十年以上、野糞生活を行われているとのこと。本書は2冊目とのことで、事後処理に利用する葉っぱの評価がチャート的に評価されていて、番組でもそこが特集されていた。ライトな本ですが、その根本の考えには確かにそうだよな、と深く考えさせられます。実行する勇気はないけど。

『発酵はマジックだ』 / 小泉 武夫

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発酵はマジックだ

  • 作者: 小泉 武夫
  • 出版社: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2014-11-20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

新刊ではないが、最近よく出ている微生物関連本に絡んで、その最大の恩恵といっても過言ではない発酵に関する専門家によるエッセイ的な本です。実は納豆やヨーグルトなどの発酵食品は、発酵利用の恩恵の一部分であって、環境問題や医療などにも及ぶ広大な利点があることを力説されています。実際、ご自身で出資を募って、微生物による廃棄物質の処理場を東北に建設し、ビジネス的にも成功されているのを見ると、ITの次に来る革命はFT(fermenting Technology)だという著者の主張に現実味を感じます。